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各国商標制度事情 2018年第5号【ミャンマー】

各国代理人から送付されましたサーキュラーから注目すべき事項を挙げてご説明します。

 

【ミャンマー】新しい商標法

 

ミャンマー政府は、外国からの投資を促すべく進めている、自国の法的な枠組みの抜本的な見直しの一環として、知的財産制度の改善に取り組んでいます。

 

ミャンマー議会の上院は、2018年2月15日に商標及び地理的表示の法案を可決しました。ここで提示された新しい商標法案に基づいて、ニース分類の採択を含む国際基準に沿った商標制度が導入される見込みです。 この法案は今後更に下院の承認を得なければなりませんが、2018年6月頃にこの新しい法律が施行される予定です。

 

現在、ミャンマーに正規の商標登録システムや商標データベースはありません。この国で自己の商標の主張をするには、商標所有者が商標の所有権宣言を提出し、その宣言を証書登記事務所に登記する必要がありました。この宣言が登記されると、地域の新聞または週刊誌に「コーショナリーノーティス(警告通知)」を掲載し、公衆に対して商標所有者の主張への注意を喚起するとともに、潜在的な侵害についての警告をすることができます。 しかし、商標所有者は、依然としてミャンマーにおけるその商標の最初の使用を確約・表明する必要があります。

 

 

先願主義の採用

新しい法律の重要な特徴は、先使用主義に代わり、先願主義が採用されたことです。 現行の所有権宣言制度で保護されている商標は、新しいシステムに引き継がれることはありません。 古い制度の下に登記された商標は、新しい法律のもとで再出願する必要があります。 現在のところ、通常の出願に先立って、古いシステムの下で登記された商標が、新制度の下での再出願を可能にする移行期間の規定はありません。 こうした制度は後で発表される可能性はありますが、現在のところ公式には確認されていません。

 

つまり、既存の所有権宣言登記を有する商標所有者は、できるだけ早く、その商標に関連するすべての区分について再出願の準備をすべきです。またこの再出願の際、所有権宣言の書類も同時に提出する必要があります。

 

これはまた、すべての商標所有者にとって、ミャンマーに商標出願するか否かを検討し、自らの所有する商標群のポートフィリオを検証し、この新しい商標登録システムが利用可能になると同時に商標出願すべき重要な商標と、その関連区分を選定する重要な機会となります。 また、ポートフォリオの精査にあたり、ハウスキーピング事項(氏名若しくは名称及び住所の変更、ポートフォリオが最新の情報で構成されているかなど)を確認することもお勧めします。

 

その他重要な変更点

  • 本商標法案では、標章は、商標所有者の名称、文字、数字、比喩的要素若しくは色彩の組み合わせといった、商品やサービスを他の商品やサービスから区別できるようにするあらゆる目に見える標識若しくは標識の組み合わせと定義されています。またこの法案における商標には、団体商標および証明商標が含まれています。
  • 自他商品若しくは役務の識別力は登録のための重要な要件ですが、ミャンマー国内でその商標が商業的に誠意を持って継続的に使用されることにより、後天的に獲得した識別力についても認定します。
  • パリ条約に基づく優先権の主張が可能です。
  • 出願は方式審査と実体審査の対象となります。
  • 本法案は異議・無効・取消を規定しています。特に、商標が3年間継続して使用されていない場合は取消の対象となります。
  • 特徴的な規定として、地理的表示、商号及び周知商標保護の規定があります。周知商標とは、連邦政府教育省が定めた基準に従って、ミャンマーにおいてよく知られていると法律で規定されているものを指します。
  • 商標登録は、出願日から10年間有効であり、10年ごとに更新できます。
  • 新体制構築の一環として、ミャンマー知的財産局を新設します。

この法案は、商標侵害における民事責任および刑事責任の両面を規定し、また、関税、暫定的差し止め命令および証拠保存命令の執行を規定しています。なお、この法案はこれからミャンマー議会の下院を通過しなければならないので、今後更に変更が生じる可能性があることに注意してください。 一方、施行規則を通じて法案の中身が明確になることも期待されていますが、施行規則の公表スケジュールはまだ発表されていません。

 

どう対応すべきか?

  1. 所有権宣言登記を有する商標所有者は自らの有する商標及び関連する区分について、再出願の準備をすべきです。
  2. 上記以外の商標所有者も、出願の準備をすべきです。複数の出願が同日出願となった場合の紛争の解決をいかになすのか、旧システム下で登記された商標の所有者による異議申立の取り扱いなど、未だ不明な部分もありますが、それだけに早期出願はいっそう重要となります。この法案は他人の知的財産権を侵害する標章、悪意をもって出願された標章、周知商標と同一若しくは類似の標章については登録を受けられませんが、未だ施行されていないため、これらの規定がどのように運用されるかは明確ではありません。だからこそ、現時点では不明な条文内容の検討よりも、まず早期出願したほうがより安全です。

 

結論

ミャンマーへの外国からの投資を促進するための新しい法律や規制の制定は、国際的なビジネスにおいて重要な新たな貿易と投資の機会が生ずることを意味します。新制度への移行の準備として、この機会にブランド保護戦略を精査しておくことをお勧めします。

しかしながら、経済制裁が解除されたにもかかわらず、今なおミャンマー関連の規制がいくつか存在することを認識することも重要です。また、ミャンマーに関する金融取引は、マネーロンダリング防止規定や腐敗防止法の影響を受ける可能性があります。 制裁をめぐる環境は急速に変化し、非常に複雑になる可能性があります。 外国企業がミャンマーで事業を行うにあたっては、事前に適切な配慮を行い、制裁等の影響を受けるリスクを回避しておくことは重要です。

 

(資料提供: DEACONS