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各国商標制度事情 2018年第2号【ミャンマー】

各国代理人から送付されましたサーキュラーから注目すべき事項を挙げてご説明します。

 

【ミャンマー】新たな商標制度

はじめに

この10年間に経済と政治的な自由化が進んだミャンマーでは、貿易と外国投資のかつてない成長が続いています。その中でミャンマー政府は、さかのぼること2001年に加盟した「知的所有権の貿易関連の側面に関する協定」(TRIPS協定)に適合する正式な商標制度の実施にも積極的に取り組んできました。同国は2021年7月1日までにパリ条約第1条から12条および第19条、ならびにTRIPS協定の条件を履行し順守することが義務付けられています。

 

現行の商標制度

世界のほとんどの法域と異なり、現在のミャンマーには商標権を管理する具体的な法律が存在していません。今のところ、ミャンマー国内で自分が所有する商標の保護を希望する所有者は、農業家畜灌漑省下にある権利・保証登録官室の登録監察官権限に基づく「商標所有権宣言書」を提出しなければなりません。また、この宣言を正式なものとするためには、商標の概要を述べた警告通知を現地新聞紙上へ掲載します。3、4年毎に掲載を繰り返すことが慣習です。

 

今後の商標制度

具体的な商標法案については、起草の後、2013年に初めて議会へ提出されました。以来、議会での同案成立は期待されながら実現しないまま現在に至ります。一方で法案は数度にわたる大幅な見直しを経て、2017年8月にようやく公的フィードバックのために公表されました。

 

法案は議会(下院にあたる人民代表院と上院にあたる民族代表院)での審議を経て2018年までに可決されることが広く予想されています。

 

新しい商標法の大きな特徴

新しい法律では、商標を当初10年間保護し、その後無限に更新することが認められます。専門の知的財産室と知的財産裁判所を設立し、商標侵害に対する、より厳格な法定刑を定めた上で、正式な審査と登録手順の実施を監督します。商標制度は「先使用主義」から「先願主義」へ移行することになります。また商標権所有者は他のパリ条約加盟国における出願または登録に対して6ヶ月以内の優先権を主張することができます。

 

対応について

本制度が「先願主義」へ移行することに伴い、商標権所有者は所有する重要な商標全てについて、ミャンマーで新しい商標法が施行される初日に出願できるよう準備しておくべきです。パリ条約に基づく優先権主張をすることができない所有者は、この点について特に注意が必要です。現状の法案では既存の権利所有者に優先的登録を認める再出願のための移行期間はありません。さらに、新制度下で既存の商標が自動的に登録されることはないため、ミャンマー国内で保護を受けるためには新たに全ての商標を出願し直す必要があります。

 

それぞれの制度下で登録された商標間における紛争の可能性など、新旧制度の明白な断絶について新しい法律が一切触れていないことから、出願が必要な全ての商標は新しい法律の施行日当日にただちに出願手続を開始することが最も賢明であると考えられます。

 

これとは別に、既存の権利所有者のために新しい法律に対する暫定規定が議会で検討される場合に備え、商標権所有者は現行制度下で出願して権利を確保した上で、新しい法律が施行された段階でとるべき手段を見直すという安全策も考えられます。現在のミャンマーでは新法律はその詳細や範囲、施行日についても非常に不確実です。提案されている専門の知的財産室と知的財産裁判所が、新制度施行初日から急激に寄せられる大量の新規出願に対応しきれるかどうかも不明です。

 

(資料提供: DONALDSON & BURKINSHAW LLP