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各国商標制度事情 2017年第7号【タイ】

各国代理人から送付されましたサーキュラーから注目すべき事項を挙げてご説明します。

 

【タイ】2017117日よりマドリッド協定議定書発効

 

2017年8月7日、タイの外務省は、標章の国際登録に関するマドリッド協定議定書に加盟する文書を世界知的所有権機関(WIPO)に提出し、タイはこの協定の99カ国目の加盟国となり、ASEAN経済共同体で描かれた青写真における公約を果たしました。

 

マドリッド協定議定書は、2017年11月7日にタイで発効します。これにより、タイの商標所有者が、本議定書の下で他の加盟国を指定する単一の国際出願を提出できるようになり、また他の加盟国の商標所有者も、タイを指定国として保護を求める事が可能となりました。ただし、出願された商標がタイで登録可能かどうかの決定は、2016年7月に改正されたタイ商標法に基づくものとなることに留意する必要があります。

 

タイのマドリッド協定議定書への加盟につき、いくつかの重要な特徴を以下に要約します。

 

国際出願の受理官庁として、指定国官庁としてのタイ知的財産局(DIP)

 

タイの知的財産局(DIP)に国際出願を提出することを選択したタイの出願人は、基礎となる商標出願または基礎となる商標登録をタイに保有している必要があります。 DIPは国際出願を受理した後、WIPOに提出する前に出願書類の内容を認証します。その段階で、出願人はマドリッド議定書の下で新たな地域を指定して、保護を拡充することもできますし、そのまま出願日から約2ヶ月を要するWIPOの国際出願受理まで待つこともできます。

 

国際出願の場合、タイ特有の要件があります。第1に、タイに基礎出願/基礎登録を有する国際出願のための指定商品・指定役務は、タイの基礎出願/基礎登録におけるDIPの認めた指定商品・指定役務と一致しなければなりません。タイの登録官の厳しい審査基準適用の一環として、指定商品・指定役務の範囲がより狭いことに注意してください。第二に、他の加盟国からのタイを指定国とする出願は、現在の審査基準に従ってタイ語で審査されるため、タイの基準を遵守するために指定商品または指定役務を補正する必要があるかもしれません。

 

タイにおける拒絶理由通知期間

 

タイは、タイを指定国とする国際出願への拒絶理由通知期間として18カ月の期間を選択しており、その範囲内で登録官は国際登録の拒絶理由通知を出す義務があります。ただし、DIPは第三者から異議が提起された場合には、18ヶ月の期限を経過した後も拒絶をWIPOに通知することがあります。

 

一方この期間を国内出願と比較すると、国内出願の出願人が最初の通知または出願公告がされるまでには、約12〜15カ月かかります。

 

登録料金と存続期間

 

タイのマドリッド議定書への加盟宣言の下では、1つの領域指定または事後指定のための政府手数料(個別手数料)は1区分あたり14,400バーツ(約420米ドル)であり、商標権更新のための政府手数料は1区分あたり18,000バーツ(約520米ドル)です。

なお国際登録は10年間有効であり、この期間は更新できます。

 

これに対し、タイ国内での商標出願のための政府手数料は、1区分あたり9,000バーツ(約260米ドル)、国内ルートでの更新費用は1区分あたり18,000バーツ(約520米ドル)です。なお、1つの区分に5つ以下の商品しか含まれていない場合は、出願料・更新料が安くなります。

 

マドリッド協定議定書は優れた国際登録制度ですが、引き続きDIPによって定められる指定商品や指定役務、現地の法律や慣行に基づくタイの商標制度の特殊性を考慮すると、タイにおける商標審査方法が大幅に変わることは考えにくい点に注意することが重要です。

 

(資料提供: Tilleke & Gibbins