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各国商標制度事情 2017年第6号【インド】

各国代理人から送付されましたサーキュラーから注目すべき事項を挙げてご説明します。

 

【インド】象徴的な建築物における商標権

 

ムンバイの象徴的な建築物であるタージ・マハール・パレス・ホテルは、この建物の絵画表現を有するマークの商標権を取得しました。ムンバイ港の入り口に位置する、この築114年の建物は、インド・サラセン様式のアーチと台輪で囲われた、独特な赤いタイル張りのフィレンツェ・ゴシック様式のドームを有し、この市街地の象徴となっています。タージ・マハール・パレス・ホテルは、商標登録を得たことで、エンパイア・ステート・ビルディングやシドニーオペラハウスなどのランドマークを含むエリートクラブに加わりました。

 

登録された指定役務は、第43類「飲食物の提供、宿泊施設の提供」となっています。 しかしながら、他の有名な商標と同様に、その象徴的な性質を考慮すると、これと非類似の商品やサービスの不正使用をも防止できたほうが制度としてより良いはずです。

 

しかし、この商標登録は、港のパノラマを個人的な思い出として楽しむ観光客や、建物のスケッチをする芸術家、あるいはムンバイのマラソン大会で使用するTシャツの絵柄として、「空を背景としたこの建物を含む街の風景」を使用するイベント主催者にとって、どんな意味を持つのでしょうか?

 

商標権は、「業として使用される」場合にのみ侵害とされるため、観光客は影響を受けない可能性があります。しかし、芸術家のスケッチや、マラソンのTシャツが販売されると、適切なライセンス契約がなければ、法的措置を取られる可能性があります。

 

興味深いことに、有名な建築物の商標をめぐっては、それを取り巻く広範な議論があります。象徴的な建築物は都市の社会的、文化的精神の一部分を占めており、公衆のすべてのメンバーが「公平」かつ自由な方法で文化遺産を楽しむ権利があるとの意見もあります。

また、インドの著作権法では「建築による芸術作品」が保護されています。しかし、「公平な使用(フェアユース)」とされる、著作権保護の例外は数多くあり、公共の場に恒久的に設置された建築物については、この「公平な使用(フェアユース)」に、建築物の絵画/写真の製作や出版をも含みます。しかし、著作権による保護期間は限られており、タージ・マハール・パレス・ホテルがその保護による利益を得るには建築から年を経すぎています。よって商標権による保護がこの時間的なギャップを埋めるかもしれません。しかし、それでは保護が手厚すぎるでしょうか?

 

インドの裁判所で実際に訴訟が提起された場合にのみ、より明確な結論が提示される可能性が高いといえます。

 

(資料提供: Remfry & Sagar:こちらの原文から商標関連の部分を一部抜粋したものです)